COLORS編集長のハニーです。2021年3月にオウンドメディアの「COLORS」を立ち上げました。いざ運用を開始すると、PVやUUは思ったほど伸びないし、「これでいいのかな?」と悩むことばかり。おまけに経営陣からは、「オウンドメディアの目的ってなんだっけ?、リード獲得はどうなってるの?」と詰められて苦戦しています。

そこで、オウンドメディアを立ち上げるために参考にしてきた名記事オウンドメディアに関する27の質問に2万字で回答します」の執筆者である株式会社ベイジの枌谷氏に、当社のオウンドメディアの目的の再整理、運営のKPI、情報の届け方などさまざまな課題を120分間たっぷりとコンサルティングしていただいた内容を記事化しました。オウンドメディア初心者はもちろん、コーポレートPRや採用、マーケティングを担当している方にも、たくさんのヒントに溢れた読み応えのある内容になっていると思います。

枌谷 力(そぎたに・つとむ)氏
株式会社ベイジ 代表/マーケター/デザイナー/ブロガー
1997年にNTTデータに入社、その後デザイナーに転身し、2社の制作会社、フリーランスを経て、2010年にBtoBに強いウェブ制作会社、ベイジを起業。マーケティング、ブランディング、デザイン、ウェブ制作、コンテンツ、SNS、採用人事、組織マネジメント等、幅広いテーマで活動。
Twitter:https://twitter.com/sogitani_baigie

■オウンドメディアの目的と効果測定 

枌谷氏:エム・フィールドさんのオウンドメディアCOLORSを拝見しました。COLORSの目的は、「採用とリード獲得、社内メンバーのモチベーション」とおっしゃっていますが、率直に言って今のままではすぐにリード獲得をすることは難しいと思います。

出典:オウンドメディアに関する27の質問に2万字で回答します


購買のファネルを使って少し詳しく解説しましょう。なるべく早くリードを獲得したいなら、ファネルの下の方、数は少ないかもしれないけれど、顧客化の確率が高い層に向けた記事をアップしていくのが得策です。この層を取り込むには、リード獲得に目的を絞った「単機能系」のオウンドメディアにしていった方がいいです。どういうオウンドメディアかと言うと、例えばSEOを徹底的に意識し、1年間に100記事くらいを公開し、月間100万PV位に育てるような計画のオウンドメディアです。これを作るにはそれ相応のオウンドメディア担当者の人数と、必要に応じて社外ライターとの連携(記事の執筆を外部に委託)、それにかかる予算を用意する必要があります。このような単機能系のオウンドメディアは、事業の一環として、いくら投資をして、いくら売上を上げるか、という評価が比較的しやすいです。

一方、現在のCOLORSの記事の性質はそうした単機能型オウンドメディアの記事とは異なります。購買ファネルでいってもどちらかというと上の方、漠然とした社名認知に結びつけるような内容がほとんどですよね。つまり、「リードと採用と社内メンバーのモチベーション」と多くの目的を内包した「複雑系」のオウンドメディアといえます。
複雑系は、効果を明確に可視化することが難しいです。効果の出方は複雑で多岐に渡り、測定も難しいため、効果的なKPIの設定も困難です。ちなみにベイジが運営しているknowledge/baigeも複雑系で、KPIは設定していません。成功していると言われるオウンドメディアだと、クラスメソッドさんのDeveloppersIOや、サイボウズさんのサイボウズ式も複雑系のオウンドメディアといえます。いずれも会社の文化として運営しているので、短期指標としてのKPIを設定せずに運営しているそうです。

COLORSの場合、マーケティング目的に振り切っていない複雑系のオウンドメディアなのに、早期のリード獲得を気にしているという矛盾が、フラストレーションがたまる原因になっているのではないでしょうか。

効果の測定が難しいと言っても、複雑系のオウンドメディアがリードに貢献しないということではありません。ベイジの例で言うと、効果を実感するまでに時間はかかりましたが、オウンドメディアの開始から2年以上経過した2015年以降は、広告などのアウトバウンドの施策を打たなくても十分なリードが獲得できるようになり、2020年は過去最高の400件を超えるインバウンドのお問い合わせをいただきました。そのうち56件(12.6%)が商談に結びつき、そのうち13件(問い合わせ件数の2.9%)が成約しています。採用への影響も含めると、実際の肌間では数字以上にオウンドメディアが経営全般に貢献してくれているように感じています。

私たちの場合、仕事を発注する意思決定者がベイジのことを知らなくても、お客様の社内の人や社外の人が、ベイジのオウンドメディアや私のTwitterの読者で、意思決定者にお勧めしてくれているケースが多いです。このような顧客内部の動きは、Google Analyticsを見るだけでは効果は測れず、実態は見えません。複雑系のオウンドメディアは効果測定が難しいとお伝えしているのは、そういう理由です。

https://baigie.me/contact/


ただ、効果が見えないからといって効果測定を諦めているわけでもありません。上の図は、ベイジのホームページの「お問い合わせフォーム」の一部です。お問い合わせをしていただく際に、このようにベイジを知ったキッカケを必ず聞いています。オウンドメディアの効果を測る方法はいくつかあると思いますが、複雑系の場合は、問い合わせフォームでキッカケを尋ねたり、商談時にどのような流れで知っていただいかかをヒアリングしたりと、原始的な方法かもしれませんが、部分的な効果から、全体の効果を類推していきます。

COLORSの場合、自社のオウンドメディアで実現したいことをもう一度よく経営陣と共有する必要があると思います。もし現状のまま複雑系のオウンドメディアとして運用を続けるなら、すぐにリード獲得に直結させるのは難しいけれど、長期的に継続することで、様々な効果が期待できるということを、事業課題と結びつけて論理的に社内に説明していく必要があるでしょう。

ベイジがオウンドメディアの支援をする場合は、まず始めに、この単機能系と複雑系のサイトのお話をして、予算を握っているトップの方と、「オウンドメディアを立ち上げる目的はなんですか?」「単機能系、複雑系のどちらのメディアを目指しますか?」ということを必ず確認します。

■オウンドメディアの目的は会社の課題に直結させるべき



枌谷氏:エム・フィールドさんのCOLORSの目的は、「採用とリード獲得、社内メンバーのモチベーション」ということですが、複雑系であるとはいえ、目的の解像度がやや低いようには感じます。

オウンドメディアを始める前に、目的、市場(どの業界に対して)、対象(その業界の中のどんな人に対して)、目標(何を成果とするか)を明確にして、この4つが揃って初めて、オウンドメディアの明確なテーマや企画が生まれてきます。

そして、オウンドメディアの最大の目的は、会社の課題と直結しているべきです。例えばCOLORSの目的の一つに「採用」がありますが、どのようなスキルを持った、どのようなパーソナリティの人を、いつまでに何人採用することが目標か?ということをもっとブレイクダウンすると、採用向けの記事のテーマが今より定まってくるはずです。私は必ずしもペルソナを作ることを推奨はしていませんが、今の大雑把な目的をもっと具体的にして、ペルソナまで作ると、より具体的な企画やテーマを考えることができるようになるかもしれません。読んでもらいたい人たちに読んでもらえるようになったり、社内で書いてもらいたい人に書いてもらえるようになり、結果的に徐々に事業課題の解決に繋がっていくのではないでしょうか。

■オウンドメディアは書いただけでは誰にも読まれない

枌谷氏:PV数が伸びないというお悩みについてですが、オウンドメディアを読み手に届ける方法は、現実的にはSNS、SEO、メールマガジンの3つに絞られると思っています。SEOを狙うなら、SEOが効くテーマの記事を作る必要があります。メールマガジンを活用する場合、既存顧客やターゲットとなる人のリストを持っていることが必要になります。そのいずれも難しい場合は、SNSに頼るしかありません。

SNSはプラットフォームごとに特性があります。Facebookは身近なネットワークに対してしっかりとしたメッセージを届けることができますが、Twitterと比較して拡散されにくいです。Facebookと比べてInstagramはやや拡散されますが、インパクトのある写真なり動画なりが必要です。YouTubeも拡散性はあるますが、動画が必要なので、BtoB企業としてはハードルが高いでしょう。そもそも、InstagramもYouTubeもSNSに載せるコンテンツそのものが主役になるので、オウンドメディアのデリバリーチャネルとして適切な存在ではないかもしれません。こう考えていくと、エム・フィールドさんのようなBtoB企業が、できるだけ多くの人にコンテンツを送り届ける手段としては、Twitterが一番オススメということになります。

実はベイジのオウンドメディアは、ウェブ制作と関係がない話が多いです。例えば、「すべての働く人におくるストレスマネジメントの基本」や「伝わる提案書の書き方(スライド付)~ストーリー・コピー・デザインの法則」などですが、ストレスマネジメントも、提案書を書くことも、ベイジが仕事として受けているわけではなく、会社の活動として実践し、効果があったことを世の中にお裾分けをしている感覚です。こういう多くの人に関連したテーマの記事は、SNSでよく拡散しますし、よく読まれます。このようにすることで、ウェブ制作の話をせずに、ベイジの認知を拡げたり、あるいはリマインドしたりしているわけです。もちろんこれは直接ベイジという会社のサービス品質を示さないのですが、ベイジのコンテンツが幅広く拡散されることで、ベイジの社名認知が行われ、ウェブ制作=ベイジという純粋想起に繋がり、ホームページを作る課題が形成されたときにベイジのことを思い出し、お問い合わせいただくことに繋がるのです。

ちなみに、私の経験から、会社としてSNSを活用するのなら、SNSに向いてない人にやらせるより、向いてる人を発掘する方が近道です。いままで複数社の支援をしてきましたが、どの会社でも社員の1割〜2割はSNSに向いている人がいます。無理やり育てるより、すでに個人でSNSで発信している人を見つける方が手取り早いですよ。

エム・フィールドさんはまだ本格的にSNSをやっていないので、まずは社内からTwitter担当者を発掘するのが、オウンドメディアのデリバリー手段を開拓するための第一歩になるでしょう。

■Giveしまくれば、そのうちTakeにつながる

https://baigie.me/officialblog/


枌谷氏:そもそもなぜ私がオウンドメディアで色々な情報を無料でシェアしているのか?というその理由は、「Giveしまくれば、そのうちTakeにつながる」という結構単純な理由なんです。見返りを求めずに役に立つことをしていたら、誰かが見てくれていて、それが1年後や2年後や5年後に良い形で現れると信じて、ひたすら誰かが喜びそうなことをし続けています。

とは言え、当てもなく誰でも彼でも喜ばせようと思っているわけではなくて、ベイジのオウンドメディアの目的に沿って、私たちの顧客や採用応募者になりえる人に喜ばれることは何か?を考えています。

エム・フィールドさんは誰を喜ばせたいですか?オウンドメディアの目的を明確にすると、こういう人を喜ばせたい!っていうイメージが湧きますよね?そしたら、徹底的にその人を喜ばせるためのコンテンツを作り続けるんです。徹底的に喜ばせていると、いつか、「この会社いいよ!」と仲間にオススメしてくれたり、「この記事良いよ」とシェアしてくれる人が現れるんです。私がベイジでオウンドメディアを通じて行っている活動は、ベイジのファン作りに近いと思います。BtoBなのでそんなに強いファンが生まれるわけではありませんが、例えるならそうなります。

■ナレッジをGiveしまくっても、損にはならない

枌谷氏:ハニーさんから「そんなに会社のナレッジをGiveして、競合企業などに真似をされて損をすることはないのか?」という質問がありましたが、僕は、会社のナレッジは、そんなに簡単に他社には移らない、真似をすることも凌駕することも簡単ではないと思っています。
ナレッジをシェアすると、失うものより、得るものの方が多いと実感しています。教えてすぐ真似されるようなことは、うちじゃなくても誰かがそのうち始めてしまいます。だとしたら、うちが一番乗りで公開して感謝される方が良いじゃないですか!真似されやすい知見ほど、さっさと公開して感謝に還元する。それが私の考え方です。

提案書の書き方をオウンドメディアでシェアしたことがありますが、例えばベイジの競合企業の人がそれを真似して提案書を書いたところで、当社の提案が負けるとは思っていません。もし当社が負けたとしたら、それは提案内容で負けたのであって、提案書の書き方がうちより良かったから負けたとは思いません。まぁベイジはコンペに出ることはないんですが笑。

例えば、完璧な業務マニュアルをシェアしてもらったとしても、その完璧なマニュアル通りに動ける組織がないと、そのマニュアルを作った組織を超えることはできないんですよね。ノウハウやマニュアルだけでは事業は成り立たないんです。常に組織とセット。

ただ、有用な情報があれば、ある一定のレベルまで成長するための時間が短縮できるんです。真似をすることはできなかったとしても、新しいアイデアのヒントにすることはできる。記事を読んで、煮詰まっていた状況に光が見えた、ということもある。真似はされず、自分たちの強みを失わず、でも誰かの役に立つことができる。こういう考えを持って、ベイジのオウンドメディアのターゲットとなる人の役に立つ知識やノウハウを、これからもどんどんシェアしていくつもりです。色々な人に感謝されたいですしね笑。

■目に見えないものを経営者が信じることが大事

枌谷氏:ベイジのオウンドメディアにはKPIがないと先ほどお伝えしましたが、オウンドメディアを運営する企業の経営者の中には、「効果が測定できないのに、投資はできない!」という方もいると思います。これはもっともな意見だと思います。一方で、オウンドメディアを企業文化の一つであったり、アウトプットすることで社員に学びを深めてもらう教育の一環として捉えて、あえてKPIを設定していない会社もあります。


企業文化や人材育成の成果は、簡単には測定できません。効果を感じられたとしても1ヶ月や2ヶ月という短いスパンで実感することは難しいでしょう。だから、特に複数の目的を内包する複雑系のオウンドメディアを運営する時は、”経営者や事業責任者が「意味がある」と信じているかどうか”が実は結構大事なポイントです。

ブランド、企業文化、蓄積されたナレッジなど、効果が目には見えないけれど大事なことって会社の中には色々あると思います。

とは言え、「測定が難しいけれど効果がでます!信じてください!」と言葉で伝えて納得してくれる経営者はいないので、オウンドメディアの担当者は、はっきりとした効果測定はできないけれど、記事を書くことで、オウンドメディアが事業課題の解決にどう貢献できるのか、経営や事業にどういう好影響があるのかを構造化して、経営者や社内のメンバーに共有することが大事です。
構造が把握できれば、実数が掴めなくても経営者として意味ある活動かどうかの判断がしやすいですし、社内のメンバーも、自分たちにどんな影響があるかわかれば、オウンドメディアに協力しやすくなりますよね。

■まとめ:オウンドメディアで大事なこと


枌谷氏:エム・フィールドさんのCOLORSの目的は、「採用、リード獲得、社内メンバーのモチベーションアップ」ということでしたが、リード獲得を目的にするには現在の運営方法が適していないこと、そして採用と社内メンバーのモチベーションアップという目的を担うには、対象が曖昧だったことがわかったと思います。

今一度、オウンドメディアの目的、市場、対象、運営スタイルを見直してみましょう。そうすることで目標(KPI)も今とは変わると思いますし、記事にするテーマやタイトルの付け方も変わると思います。テーマとタイトルが変われば、SEO対策もしやすくなり、PV数にも結びつくでしょう。

文章の書き方や、写真やイラストの使い方など、色々な要素がありますが、オウンドメディアで何より大切なのは、目的を忘れないことです。
そして長い目で見て徹底的にGiveをすること!
これからのCOLORSの変化を楽しみにしています。がんばってください!

ハニー:枌谷さん、ありがとうございました。今回の取材を通して学んだことを形にして、エム・フィールドグループの目的に沿って、Giveできることをどんどんシェアしていきたいと思います!