このコンテンツは、スキルアップを目指している皆様、新卒教育に携わる皆様、そして新卒の皆様向けに書かれています。

臙脂(えんじ)色が好きな佐々木雄哉です。現在はエム・フィールドのSITC事業部でAI関連の研修の企画開発を担当しつつ、グループ会社の株式会社エイアイ・フィールドのResearch and Education UnitでAI関連技術の研究開発も兼務しております。

「自由なテーマで記事を一つ!」との依頼を頂き、当初は人工知能のホットなトピックの紹介記事でも書かせて頂こうかと思っていたのですが。。。

ちょうど新入社員の研修の真っ最中の会社が多いと思いますので、「社員教育」について書いてみたいと思います。ちなみに、私が受け持つ研修部門では、当社の新入社員21名のPython研修などを手がけるとともに、社外の新入社員のLINUX研修、SQL研修、Python研修や機械学習研修なども担当させていただいています。

教育畑に12年間、多種多様な教え子を1,000人以上教えてきて、思ったこと

本題に入る前に、前職でどのようなことをしていたかの簡単なご紹介をさせていただきます。前職では、幅広く受験指導をしておりました。学年は小学校の低学年から社会人の再受験生まで。学力も模試の偏差値が30台から80超えの生徒まで。

指導形態も家庭教師、個別指導、集団指導、など様々で、指導科目も小学生の算数、理科、中学生の数学、理科、英語、国語、高校生の数学、物理、化学、現代文、世界史と、かなり幅広い科目を担当していました。

また、生徒の家庭環境も低所得層から富裕層。生徒の通っている学校も多種多様で、通信制の学校や、一般的な公立校から有名進学校まで幅広く担当いたしました。

こうした様々な生徒やご家庭を見てきて思ったことがあります。
それは、

『人は皆、「時間」という大きな資本を与えられている。』
『教育投資によって、その「時間」という資本の運用を如何に効率化していけるかが肝である。』

ということです。

一見すると大変陳腐な話なのですが、この記事では「人的資本」という考え方をご紹介しながら、愚直に、上記の言葉の意味を紐解ければと思います。

実はみんなお金持ち!?

唐突ですが皆様に質問です。皆様は、どのような「資産」をお持ちでしょうか??
おそらくは、「銀行の預金残高」、「株」、「不動産」などを思い浮かべる方が多いかと思うのですが、ここでご紹介させていただきたいのが「人的資本」です。

1992年にノーベル経済学賞を受賞したゲーリー・スタンリー・ベッカーは、「人的資本」という分野のパイオニアとして「人自身に価値がある」という考え方を提唱しています。この「人的資本」ですが、端的に言いますと「将来の見込み収入の現在の価値」という考え方です。
つまり、人的資本は、みなさまが気付かずに既にお持ちになっている、みなさまの資産の一部なのです。実際に計算してみることで、その額の大きさに驚かれるかと思います。

人的資本を計算してみよう!

人的資本の計算方法には様々な考え方がございますが、ここでは簡単にするために交通事故の賠償金の算出や年金の計算などに用いられる「ライプニッツ係数」を用いた計算方法をご紹介します。

計算式は以下の通りです。
人的資本 = (今後の平均年収予想)×(今後働く年数に対応したライプニッツ係数)

この式の中で用いる「ライプニッツ係数」は、賠償金の計算の際に齟齬が生まれないように民法で定められている数字に基づいて算出された値を用います。年齢に応じて、「ライプニッツ係数」は変わるようになっています。

WEBで「ライプニッツ係数表」と検索いただければ、様々な保険会社が出している「ライプニッツ係数」の表を見つけることができます。国土交通省のサイトにも掲載されていたので、一例としてご紹介します。

参考:国土交通省「就労可能年数とライプニッツ係数表」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/resourse/data/syuro.pdf

新入社員は大金持ち!?

ここでは、一例として大学を卒業したばかりの22歳の男性新入社員の人的資本を先述の式に従って計算してみます。

労働政策研究・研修機構の「ユースフル労働統計2020」によると、2018年における大卒男性の生涯年収(60歳定年退職、退職金含まず)は、100-999人規模の企業においては2億6,150万円と記載されています。

これを、就労年数(60-22=38)で割ってみると、1年間あたり、約688万円の年収予想となります。
また、22歳有職者のライプニッツ係数はライプニッツ係数表より24.519と分かります。

それぞれの値を以下の式に代入します。

人的資本 =(今後の平均年収予想)×(今後働く年数に対応したライプニッツ係数)
     = 688万円 × 24.519
     = 16,869.072万円

計算結果より、大卒1年目の新卒の人的資本は約1億6,870万円であることが分かります。(また、この数字をもう少しだけ深掘りすると、大卒1年目の新卒の人は、これから生涯にわたって1億6,870万円分以上の価値を、会社を通じて社会に還元する、ということをも意味していますね!)

教育投資でみんなハッピー!


さて、皆様は人的資本の計算結果をどのように思われたでしょうか?
とりあえずは、「銀行の預金残高」よりも遥かに大きい額であることに驚かれたのではないでしょうか。ここで、ようやく冒頭のお話に戻ります。

冒頭部分で
『人は皆、「時間」という大きな資本を与えられている。』
『教育投資によって、その「時間」という資本の運用を如何に効率化していけるかが肝である。』

というお話をさせていただきました。
今回の人的資本の計算に直接的には登場しませんでしたが、「時間」という要素は上式において様々な形で関わっています。

上式では平均年収に時間を掛ける代わりにライプニッツ係数を掛けて人的資本の計算をしましたが、ライプニッツ係数の代わりに時間を掛ければ「生涯年収見込み額」になります。これは「時間」を運用することで、年収相当額の給与を得て、それが積み重なって生涯年収見込み額になっている、と解釈できます。
つまり、みなさんは図らずとも、「時間」という資本を運用していた、という解釈が成り立ちます。

「資産運用なんて難しくてできない!」とか、「資産運用には興味はない!」と言っている方も、実は生まれながらにして「時間」を投資している投資家であった、と言い換えることもできるかもしれません。

さて、ここで「教育投資」のお話です。教育投資をすると人的資本に対してどのように影響があるのかを上式で考えてみます。

人的資本 = (今後の平均年収予想)×(今後働く年数に対応したライプニッツ係数)

教育により平均年収が上がることで、人的資本が増えると考察できます。
理論上は、スキルが上がれば時間あたりの生産性が向上していき、生産性が向上した結果として、より年収が上がります。、年収が上がることで人的資本もより大きくなります。

また、各人の生産性が向上することで、従事しているビジネスもより円滑に回るようになり、属している会社の業績も向上し、さらに投資に回す金銭的な余裕が生まれ、その投資資金の一部を教育投資に回すことで、さらに各人の生産性が向上して。。。という好循環が成立しそうです。

まとめ

本記事のまとめに入らせていただきます。
人はみんな「人的資本」という大きな資本を有しています。そして、その大元となるのは「時間」という資本でした。

教育投資により各人の生産性が向上することで「時間」の価値が高まっていきます。その結果として人的資本を高めることができ、また、人的資本が高まるのと同時に、様々な良い副産物も生まれます。
例えば、より良い仕事ができるようになることで、よりお客様の満足度を高めることができるかもしれません。また、より効率的に仕事がこなせるようになることで、残業時間を減らすことができるかもしれません。

新卒の皆様は是非とも、自らの人的資本を意識して、何の対価として将来的に人的資本の分の現金を受け取っていくかに思いを馳せてみてください。

また、自己投資や、会社が与えてくれる教育機会を育最大限活用して、自らの「時間」の価値を最大化することや、人的資本を高めることを意識してみてください。

教育に携わる企業の教育担当者のみなさまは、とても大きな資本を預かっていることを改めて意識してみることで、少しだけ、新卒はもちろんですが、自社メンバーの教育や研修の見え方が変わってくるかもしれません。

私は、様々な人の「人的資本」を最大化することを意識し、新卒研修や今後ますます需要が拡大するAIに関連した研修を企画していきたいと思います。
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