COLORS編集長のハニーです。ベイジの枌谷氏に続き、オウンドメディアを自社の事業に活用している先輩企業にインタビューさせていただく機会をいただきました。第2弾として今回は、質の高いコンテンツが特に採用候補者に人気の「ゆるやか広報班」を運営しているイントリックス株式会社の岸田朋也氏、オウンドメディアの目的設定の考え方やコンテンツを企画する際のコツなど詳しく教えていただきました。

ゆるやか広報班

岸田朋也氏
イントリックス株式会社 コンテンツプランナー
出版社で20年近く編集者として活躍したのち、デジマ活用が進むBtoBでのコンテンツ制作ニーズの高まりを感じ、イントリックスに転職。
現在はBtoB企業のオウンドメディアなどのコンテンツプランニングに携わる。自社のオウンドメディア「ゆるやか広報班」の編集長を2年間担当。
愛犬はマルプーのめんまちゃん2歳。

–イントリックス社の事業内容と、「ゆるやか広報班」(以下、ゆる広)で岸田さんが担当されていた役割について教えていただけますか?

岸田氏:イントリックスは、2009年に創業したBtoBに特化したWebコンサルティング、Web制作の会社です。「日本のINDUSTRYをINTERNETでINNOVATEする」をミッションに、BtoB企業のデジタルコミュニケーションを総合的に支援しています。当社のオウンドメディアであるゆる広は2013年にスタートしました。イントリックスの活動を広く知ってもらい、イントリックスという会社に親近感を持ってもらいたいという立ち上げ当時からの目的は、今でも大きくは変わっていません。
当社はオウンドメディア専任の担当者を置かず、社員の中から編集長1名と編集担当者2〜3名を決めて運営しています。任期は通常1年間ですが、私は2019~2020年の2年にわたり、全体のディレクションや予算管理、各記事の編集業務に携わりました。

岸田さんが編集長になってから、意識したことや改善したことはありますか?

岸田氏:ゆる広は社内活動全般を発信するという目的のほかに、運用していく中で潜在ユーザーとの接点の確立や既存ステークホルダーとの関係維持などのミッションも担うようになったことで、11もの記事カテゴリーが用意されています。そんな経緯もあってか、私が着任した当時は目的やターゲットが異なるさまざまな記事が同一メディア内に混在していて、どこか寄せ鍋のよう印象がありました。

ハニーさんも実感されていると思いますが、オウンドメディアは立ち上げよりも続けていくことがめちゃめちゃ難しいんですよね(笑)。しかもゆる広の場合、執筆者には書くことに慣れていない社員もいるので、コンセプトがふわっとしている中でカテゴリーがたくさんあると、ついつい書きやすいテーマに流れてしまいます。結果、運用すればするほどメディアとしてのメッセージがぼやけて、ターゲットにうまく伝わらなくなってしまうんです。

当たり前ですが、「誰に、何を、どのように届けるか」はものづくりの基本ですし、複雑化した運用を改善するためには、メディアの目的を明確にして、シンプルにするのが一番です。そこで最初に取り掛かったのが、ゆる広が担う役割のスリム化とメディアとしての性格の再定義でした。

–メディアとしての性格の再定義をするにあたって、具体的にどんなことに取り組んだのでしょうか?

岸田氏:まず目的を「採用活動のサポート」の1本に絞りました。そして、応募を検討している求職者の方や内定者の方にイントリックスの内側を知ってもらい、あと一歩を後押しすることを目指しました。
その背景には、入社後のミスマッチを減らすという会社の課題がありました。もちろんゆる広だけで問題を解決できるわけではないですが、ゆる広を通じて「入社後にどんな考えや性格の人と一緒に仕事をすることになるか」をリアルに想像してもらえるような、入社の前と後で起こる誰も得しない状況を減らすことに貢献できるような、そんなメディアを目指しました。

次にメディアとしての性格の再定義ですが、「ゆるやか広報班」という名前の影響もあって、11カテゴリーの中でも「ゆるふわ」という一番人気のカテゴリーがあります。ですが、趣味の話や流行りものランキングなど、とにかくなんでもありのカテゴリーだったので、ここがふわっとしているから全体的に寄せ鍋感を感じたんじゃないかと考えたんです。

特長を一言でうまく言い表せないメディアは個性がない、プロが作るメディアではないというのが編集者時代からの私の考えです。つまり、どれだけ良いキャッチコピーをつけられるかですね。メディアにはそれぞれの“色”があって、そこにファンがつきます。すると、作り手もその期待に応える記事を考えていくわけですから、迷走することが減って好循環が生まれます。

ですのでこの看板カテゴリーを再定義することが、ゆる広の性格の再定義につながると考えました。ゆる広の新しいキャッチコピーを「イントリックスの人柄を好きになってもらうメディア」とし、内定者にイントリックスの人柄を好きになってもらうためには、どんなゆるふわ記事を作ったらよいか? ということで、企画作りの考え方から考え直しました。

–メディアの目的を採用活動のサポートに絞って、企画作りに対しての考え方も変えたのですね。企画作りにおいてのポイントがあればご教授いただけますか?

岸田氏:ゆる広における企画作りのポイントは2つあります。
1つ目は、執筆者の「個」を際立たせることです。ここでいう「個」とは、執筆者の職種やポジションの違いからなる知見や視点で、これをイントリックスの人柄と定義づけました。記事は基本的に社員が執筆する記名原稿ですので、この特性を生かして執筆者の「個」を全面に押し出すことを心掛けました。
2つ目は、「ゆるふわ」というカジュアル感を残しつつ、企業メディアの記事として恥ずかしくない内容とすることです。

この2つのポイントの掛け合わせ、つまり企画のテーマはカジュアルだけど、そのテーマを執筆者の職種やポジションが持ち得る知見や視点で切り取っていくことを企画作りのスタンスとしています。自分の好きなことを書くわけですから、執筆に慣れていない社員も書きやすいだろうし、このような記名原稿が増えれば増えるほど、ゆる広の中に多様な職種が働くイントリックスの人柄がにじみ出るんじゃないかと考えた結果です。
この新しいコンセプトで作成した記事の中で、特に反響の大きかった記事の1つをご紹介します。

「NYの絶品バターミルクビスケット Webアナリストが完全再現に挑んでみた」

この記事は、執筆者がニューヨークで食べたミルクビスケットを再現するというだけの記事なのですが(笑)、レシピがわからないビスケットを作るために、Webアナリストらしく、まず理想と現実のギャップを確認します。そして粉の配合や生地の混ぜ方など、さまざまな要素をリストアップして何度も改善点を確認しながら50回以上もPDCAを回し続けたのです。Webアナリストという仕事で日常的にPDCAを意識しているからこそできたビスケット作りであり、テーマはゆるいけど、読んで見るとWebアナリストの視点と知見が存分に表れている記事になっています。

–ビスケット美味しそうです(笑)。50回以上も条件を変えながら再現するなんて、執筆者の仕事に対する姿勢が垣間見えますね。この方なら一緒に仕事をしても楽しそうです!しかし、あまりに個に寄りすぎると、会社の魅力を伝えることが難しくなりませんか?

岸田氏:大前提として、イントリックスがBtoBのデジマ支援の会社であり、この領域のリーディングカンパニーであることを広く知ってもらうという全社共通の目標があります。

イントリックスではBtoBのデジタル活用において、戦略・クリエイティブ・テクノロジーの三位一体で支援できることが強みなので、それだけサービスも多岐にわたるわけですが、自社サイトやセミナーでそういった会社としての強みをわかりやすく発信している一方で、ゆる広ではそこで働く社員の人となり(=イントリックスの人柄)を知ってもらうための記事を発信していくことで、外と内の双方からイントリックスの魅力を伝えてくという構図が機能すれば最高です。

実際、採用面接で「ゆる広を読んで働きたいと思いました」と言ってくださる方が実際に増えてきましたし、これは完全に副産物ですが、お客様から「記事を読んでいつも接しているイントリックス社員の違う一面を知って親近感が湧いた」という嬉しい声もいただくこともありました。私が編集長をしている間に、「イントリックスの人柄を好きになってもらうメディア」として、少しは成長できたかなと感じてとても嬉しかったですね。

冒頭でもお話しましたが、自社メディアは立ち上げるよりも継続するほうが難しいんです。あれも言いたい、これも言いたいの積み重ねで記事が増えていくうちに、メディアの性格がぼやけてしまったり、見聞きする反応に揺さぶられてしまったり。だからこそ、目的やコンセプトは極限までシンプルにすべきだと思っています。

ゆる広もまだまだ試行錯誤の繰り返しではありますが、確実に1つ1つ改善することで、メディアとしての効果を高めていけたらと思っています。
2021年8月から新しい編集部メンバーに入れ替わり、私は編集部を離れましたが、ますます成長していくだろうこれからのゆる広が楽しみです。

編集後記:
自社サイト、セミナー、オウンドメディアとそれぞれのメディア毎に多面的に自社の強みや魅力を発信する相乗効果を感じました。岸田さんのお話で、オウンドメディアの目的を極限までシンプルにすることの大切さと、職種とポジションによる視点の違いを可視化するというお話が特に勉強になりました。COLORSはまだまだ迷走中ではありますが、近い将来、ゆるやか広報班のように、事業課題に貢献するメディアになるためのヒントをいただきました。ありがとうございました!